平成23年、自社開発品はVPOPシリーズ以来発表されていなかった深山。紙の流通だけでは生き残るのが厳しい時代となっていた。深山は紙を扱うだけの卸売り商社のイメージを打破しなくてはならなかった。深山にしか作れない商材を多くのお客様に、そして新しい市場と顧客の開拓をめざし、開発チームが組まれる。テーマは「紙」そして、「新しい価値を生み出す」。今までにない取り組みは会社の期待値も高かった。
しかし、テーマは漠然とし、なかなか思うように商品企画は進まなかった。案を出しては消え、お客に持ち込んでも良い返事はもらえない。その繰り返しが続き、受注への道のりは容易ではなかった。
開発チームは根本から離れてみた。「紙の折れ線」をパッケージや製品を組むという概念から離したのだ。紙加工は紙質、折り、流れ目が深く関係している。このバランスによって製品は出来上がり形として成り立つ。開発チームのメンバーであるデザイナーは流れ目で変わる紙製品の表現と折りから生まれる紙の繊細な美しさに着目した。折れ線を機能ではなく装飾として考えたのだ。
そして試行錯誤の上発見したのが折れ線を交差させ折り目をつけ、丸めることでまるで紙ではないような凹凸と繊細な風合いを残すというテクスチャだ。またより深い凹凸が浮かび上がるように流れ目と折れ線の関係性も追求した。そして今までにない新しい紙のテクスチャが出来上がった。
そのテクスチャを使って出来た製品が「包花紙」である。この包花紙は折れ線を折って丸めて筒状にするだけで不思議な凹凸を維持できる。ペットボトルや瓶、紙コップを包むことで出来る紙の花瓶。選定したのは肌触りが良く風合いの良い紙マーメイド。その質感と形状は花を引き立たせた。
販売形態は平らで軽く、デザインは和をベースにした。このことで海外客にも人気のアイテムとなった。今までにない商品は大手文具ショップにも目が止まりデザインクラフト雑貨の中で人気商品として販売されている。
深山だからこそ気づいた紙の表情。この表情を私たちは商品としてお客様に届けたかった。包花紙にとどまらず深山は常に新商品開発に力を注いでいる。今後も紙の表現方法を追求し時代とともに新しい挑戦をし続ける。